キャッシング用語

いつか満天の星空の下で

     copyright ©2003 -2017いつか満天の星空の下で all rights reserved

「刀」


今でも時々思い出すことがある
わたしを見つけて
どうしても話がしたいと寄ってきた
見知らぬ女性のこと


静かな口調で語り始めた話は
とても心地よいものではなく
わたしの前世は武士で人々を切ったから
因果応報でお腹を切ることになるだろうという
不気味な予言だった


数年後、彼女の言葉通りに
二度もお腹を切ることになるとは
思いもしなかった
通常は縦に切る手術なのに
メスは横へと入れられた
珍しい切り方だと医師は自慢していたけれど
わたしは予言を思い出して震えた


まるで切腹のような手術は
背中から入れた麻酔が効かなくなり
何日も痛みと闘うことになったけれど
その激しさは生まれる前の世界で
わたしが人びとに
与えた痛みだったのかもしれない


今でも、刀を目も前にすると
動けなくなるほど惹き込まれるのは
きっと遠い記憶が蘇るためだろう


生まれる前の遥かな記憶
そこに存在する刀が
眠りに就くことはないのだ



(野の花)
別窓 | 創作 | ∧top | under∨

ボクとお月様

『ボクとお月様』

ボクは独りぼっち
満月の夜に
男の子に抱き上げられて
知らない街へ連れられて来たんだ

お父さんも お母さんも
お兄ちゃんもいたのに
ボクは違う家に住むことになったんだ

でもね
最初の頃はくすぐったいほど撫でられて
それなりに幸せだったんだよ
ある日、美味しそうなご馳走に手を出すまではね

だって
ボクは知らなかったんだもの

テーブルの上にあるものが
ご主人様たちだけの特別なご馳走で
床に置いたアルミのお皿のミルクしか
舐めてはいけないってこと

だから
ひょいって這い上がってみたんだ
いつだって
ボクのことを可愛いがってくれたから
優しく食べさせてくれるだろうって思っていたさ

それなのに 
凄いけんまくでご主人様のママって人が怒り出して
ボクは首根っこを掴まれて
一瞬に追い出されてしまった

小さなご主人様は泣いてくれたけど
ボクは許してはもらえなかった
クーンクーンって甘えても
誰も扉を開けてくれなかった

ドラ猫って言うんだね

知らなかったよ
ボクが
孤独なドラ猫になっちゃうなんて

ひとりぼっちなんてイヤだよ

お父さん お母さん
お兄ちゃん
何処にいるの?

あの日と同じ満月が
ぽっかりと空に浮かんで
ボクを見つめている

優しいのかな
お月様はボクを
好きになってくれるかな

「お月様
 お月様
 ボクの友達になってください」


夜空には
見事なほどに丸い月が
頷くように微笑んでいた






2005/
別窓 | 創作 | ∧top | under∨

頂(いただき)へ続く道

遠くに見える
あの頂を目指して進もう
疲れ果てた重い駆を引きずりながら
心に映す青い空

まだ歩けるさと
眠り続けた意識が呟く
もう これまでだと跪くわたしの奥に
ふいに目覚めるもの

風は追い風になり
陽は穏やかになる
姿なき自然の声に耳を澄ませば
木々は歌い草花は微笑む

まだ道は続く
遠く見える頂を心に捉え
疲れ果てた重い駆を引きずりながら
未来を染める青い空

まだ歩けるさと
眠り続けた意識が呟く







ファンタジースキーさんに100のお題
第1問:砂の城 
第2問:囚われた娘 
第3問:天界 
第4問:大神殿 
第5問:交易都市 
第6問:喧嘩 
第7問:森の木霊 
第8問:さらなる力 
第9問:封印 

第10問:頂上 


別窓 | 創作 | コメント:0 | ∧top | under∨
| いつか満天の星空の下で | NEXT