キャッシング用語

いつか満天の星空の下で

     copyright ©2003 -2017いつか満天の星空の下で all rights reserved

色彩の森

その森は
あの人の描く絵の中にあった

わたしは気づかずに
足を踏み入れてしまい
哀しみの涙で
絵の具が溶け出した

足元から染みてくる
森の色彩の中で
空を見上げれば
空もまた描かれた蒼い空だった

いつからだろう
わたしの見る景色は
あの人の描く絵の中にあった

躊躇うこともなく
その世界に魅せられた心は
まだ乾かぬ絵の具の中に
すべてを投げ入れていた

駆ごと
あの人の好む色に
染まってしまえ

色彩の森に時を忘れたまま
次第に手足は
深い緑になってゆく

髪の先が染まるほど
日毎に描き加えられてゆく筆

あの人の操る筆先が
駆の上を通り過ぎないかと
そればかりを願った日々

けれど
やがて絵筆は止まり
わたしは額縁に入れられていた

あの人は見るだろうか
この絵を
まだ見るだろうか

わたしに気づく日は
あるのだろうか



:*☆*:;;;:*☆**☆*:;;;:*☆**☆*:;;;:*☆*
お読みいただきましてありがとうございます。

「ふしぎの森」の前編から
ブログで公開する詩を一部入れ替えました。

:*☆*:;;;:*☆**☆*:;;;:*☆**☆*:;;;:*☆*
別窓 | 詩集『ふしぎの森』 | ∧top | under∨

翡翠の森

『翡翠の森』

詩/花すみれ



遥かかなたに霞む街並み
いつからだろう
わたしは翼を持ち
喧騒の中から抜け出していた


初めて飛ぶ空はどこまでも青く広がり
何もかも忘れ夢中で翔け巡っていた
雲の隙間を縫うように
高く高く
遠くもっと遠くまで飛ぶんだ


気がつけば
わたしは天空のどこかに紛れ込み
周りは一面翡翠に覆われていた
優しき日々が滲んで見える
愛しくて懐かしい故郷の地よ
お前はなんて遠いのだろう


あゝ わたしを待つ人もいたというのに
今は辿り着いたこの森から
抜け出す術もない


翠の森よ
冷たく美しい翡翠の森よ
わたしの涙で溶けて流れて
優しい空の雨になれ


せめて涙で還りたいのだ
心の欠片を雫に溶かして
地上に翡翠の雨が降る
深く深く染み込んでゆけ
愛しき想いよ染み込んでゆけ


いつかこの身が枯れはてて
翡翠の森の石になるまで



別窓 | 詩集『ふしぎの森』 | ∧top | under∨

鳥になりたかった

『鳥になりたかった』


鳥になりたかったの
どこまでも続く
遥かな空を抱きしめて

あなたに繋がる広大な空を
風と一緒に翔けたかった

虹のかかる丘
夢を歌った日々
懐かしき想い出が風に舞う

翼をはためかせて
小さな瞳でもまっすぐに前を見て
たどり着く日を空に描きながら

鳥になりたかったの
しがらみのない自由な世界を
優しい歌声を辿りながら
空を翔ける鳥に

鳥になりたかったの
白い翼の鳥に

あなただけを見つめる
小さくて目立たない鳥に

だけど誰よりも
優しい歌声を届けられる
鳥になりたかった



(「蒼き翼のあなたへ」2005)
別窓 | 詩集『ふしぎの森』 | ∧top | under∨
| いつか満天の星空の下で | NEXT