キャッシング用語

いつか満天の星空の下で

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彼岸花

『彼岸花』


「その花には毒があるのよ」
細く朱い花びらに触れたわたしに
平然と雑草をむしりながら貴女は呟いた

「あゝ 心配しなくても大丈夫
 花びらに触ったくらいでは どうってことないから」

けれど 覚えている?
その夜
熱を出して寝込んでしまったわたしのこと

花のせいではなかったけれど
きっと、毒を持つものに触れてしまったという
恐怖の心が体を蝕んだのね

手招く細い花びらは
なんて情けないやつなのだと
退いたわたしのことをを嘲笑ったかしら
庭の片隅に朱く妖しく咲きながら
すまし顔で揺れていたわね

昨日、同じ花を山の小道で見かけたの
緑の草に囲まれた中に
妖しく微笑んでいる朱い花
こちらへおいでと手招きを繰り返していた

もしも 
生い茂る草の中に足を踏み込んで
花の妖気に包まれてしまったなら
瞬間に時を遡っでいたでしょうね

貴女と過ごしたやさしい思い出の中に
きっと戻ってしまっていたわ

そして
背中に聞こえる
「その花には 毒があるのよ」という声に
涙を止めることなどできなかったでしょうね


美しく妖しい彼岸花を
石の花瓶に挿しましょう

秋の空に映えるよう
鮮やかに朱いその花を




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