キャッシング用語

いつか満天の星空の下で

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ぎざぎざの想い出

色合いも地味で
香ばしいとも言えなくて
それでも一番好きだった
母さんの得意なもち麩の煮付け

学校でお弁当を広げたとき
「これ、なあに?」って近づいてきた友達
名前も浮かばなかったわたしは
咄嗟に「ぎざぎざ」って応えてしまった

それからのお弁当は
もち麩が入るたびにおかず交換
孤独で苦手だったお昼の時間は
やさしいひとときに変わっていった

今、小さな鍋にゴトゴト踊るのは
あの日幸せを運んでくれた 
いびつな形のもち麩たち

ぎざぎざの味を調えながら
寂しくなると いつも煮ている

「ぎざぎざ頂戴」

友だちの声が
背中からそっと聞えてきそうで

母さんの味に近づくように
砂糖を少し足しながら




2008-10-27 | 硝子の林檎syunran
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人形のワルツ

人々が眠りに就いた頃
動き始める人形の夜

涙に染まった青い目と
少女の好きな赤い服

細いヒールの靴を脱ぎ
ブロンズの髪を靡かせて
いつか遊んでくれた日の
ワルツをひとり踊りましょう

古びたチェストの晴れ舞台
舞い散る埃の紙吹雪

思い出置き場の棚の上
あの子の笑顔を胸に抱き

誰も知らない真夜中の
主を亡くした部屋の隅
月の光に抱かれて
ワルツをひとり踊りましょう









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風のささやき

風がゆく
ふるさへ続く空のもと

掌になり頬に触れ
見せない涙も浚うよう


風がゆく
茜に染まる夕暮れに

立ち竦む心に微笑んで
そっと手を差し伸べながら


風はゆく
明日へ向かう空のもと

歩き始めた旅人の
肩先に手を添えるよう

もう大丈夫
大丈夫だよと囁いて

広大な空を翔けてゆく


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